00年代US・UKロックアルバム私的10傑

今年も、というか00年代もあと数時間。ということで、US・UKロックアルバムを中心に誰得ランキングを記したいと思う。


第10位 Radiohead
Kid A
[Parlophone; 2000]

Kid a

Kid a

いまだに賛否両論で名高いRadioheadKid A。これ入れるか入れないか迷ったけど、当人たちが「これはポップレコードだ」と主張しているので入れることに。僕も好きだし。「かつてのバンドサウンドが〜」とか言われたりもしますが、けっこうバランスの取れたアルバムだと思います。"Optimistic"などのエレクトロ・ロック(と言っていいのか)、"How to Disappear Completely"の歌詞の完成度の高さも見過ごせない。しかし個人的にはタイトル曲の"Kid A"が一番かな。ライブテイクも素晴らしいものです。


第9位 Jimmy Eat World
Bleed American
[Dreamworks; 2001] 

Jimmy Eat World

Jimmy Eat World

もともとのアルバムタイトルはBleed Americanだったのだけれど、2001年のアメリカ同時多発テロの影響でJimmy Eat Worldと改名されている。しかしここではあえて、Bleed Americanというタイトルを使う方向で。やはりというべきかこのアルバムがアメリカにおける「エモ」を形作ったと考えれば、評価されるべきなんじゃないかなあと。"Bleed American"、"A Praise Chorus"、"The Middle" 、"Sweetness"にそれが表れてる。特に"Sweetness"はBillboard Modern Tracksでは1位とったし、"The Middle"に至ってはBillboard Hot 100で6位入りの快挙。商業面でも大成功しているので、当たり前といえば当たり前。ただ、"Your House"や"Hear You Me"という曲があるようにエモ一辺倒のアルバムでもない。というかボーカルのジム・アドキンスは「エモ」バンドと言われるのを相当嫌っているので、オルタナティブロックアルバム(最近は何をもってオルタナとか言われてるが、それはまた別のところで)として認識すべきかと。だからこそ、そこらへんの叫び倒しているバンドとは違うのだと思う。


第8位 The Like
Are You Thinking What I'm Thinking?
[Geffen; 2005]

Are You Thinking What I'm Thinking

Are You Thinking What I'm Thinking

おいマジかとか言われそうですが、このアルバムはなかなか。ちなみにバンドメンバーの親父は皆、音楽業界関係者。色眼鏡で見てしまいがちだが、どの楽曲も良質インディー・ミュージック。"Mrs. Actually"、"Bridge to Nowhere"そして"June Gloom"といった独特のコード進行はたまんねえわ。ライブのレベルも高いと思う。今は新メンバー加入で4人だけど、3人でライブやってたときはすごく感じが良かった。ベースのシャーロット・フルーム脱退が悔やまれる。


第7位 Wolf Parade
Apologies to the Queen Mary
[Sub Pop; 2005]

Apologies to the Queen Mary (Dig)

Apologies to the Queen Mary (Dig)

最近評判がアレな感じになってきたSub Pop。でも個人的にWolf Paradeは外せんなあというところ。評価が分かれるところで知られるこのアルバムだが、私は好きなので入れさせてもらう。全体的に漂うスカスカながらも独特のひねくれ具合が雰囲気がたまらない。"I'll Believe in Anything" とかまさにそれだ。季節を匂わせてくれる"Same Ghost Every Night"も素敵だと思うし、"Modern World"ではギターポップをしていて好感が持てる。何よりもボーカルのスペンサー・クルグのボーカル。この声が苦手とか言う人もいるけれど、肯定派の自分としてはこの声こそWolf Paradeなのではないか。


第6位 Radiohead
In Rainbows
[Self-released; 2007]

In Rainbows

In Rainbows

またRadioheadかよどんだけ信者乙とか言われそうですが、そうですまたRadioheadです。しかしながら彼らのソングライティングレベルの高さを一番よく示しているのが、このIn Rainbowsだと思うのです。1曲1曲が洗練されているとでも言いましょうか、余計なものがない。エレクトロビートの"15 Step"から始まり、"Bodysnatchers"からボルテージが上がっていく。"All I Need"とかそう意味では良いよね。そして"Videotape"で静かに幕を閉じる。これは若いバンドにはなかなかできないことじゃないかな。個人的に"House of Cards"が最高です。ギターロックを突き詰めた快作。


第5位 Sigur Ros
Agatis byrjun
[Smekkleysa; 2000]

Agaetis Byrjun

Agaetis Byrjun

おなじみアイスランド出身の4人組。US・UK中心じゃねーのかとか、アイスランドじゃ1999年発売だろというツッコミはなしで。それはさておき、2曲目の"Svefn-g-englar"から圧巻。宇宙に連れて行かれます。光り溢れる"Staralfur"(曲名がかわいい)を挟みつつ、"Flugufrelsarinn"から"Vidrar vel til loftarasa"にかけての重厚ながらもしっかりした楽曲群。何といっても白眉は終盤のアルバムタイトル曲である"Agatis byrjun"だと思う。この曲にアルバムが収束していく感じがいい。"Olsen Olsen"も良いのだけれど、やはりここは譲れません。2000年初頭の名盤。


第4位 Wilco
Yankee Hotel Foxtrot
[Nonesuch; 2002]

Yankee Hotel Foxtrot

Yankee Hotel Foxtrot

イスラエル諜報機関モサドが乱数放送で使用していたコールサインに由来するアルバムタイトル。Wilco実験音楽がどうのこうのと評されるけど、このアルバムは実験要素とポップソング要素がうまく融合していると思う。"Kamera"や"War on War"、"Heavy Metal Drummer"はすごくポップしていて大好き。しかし彼らやプロデューサーであるジム・オルークの真骨頂は"Radio Cure"、"Ashes of American Flags"、"Poor Places"にあると思うのです。そういえば@kankisenもこのアルバムが好きだと言ってような。とりあえずぜひ御一聴を。


第3位 Arcade Fire
Funeral
[Merge; 2004]

Funeral

Funeral

2004年からピッチフォーク界隈で大人気なバンド。ギター、ベース、ドラムだけでなくバイオリン、バンジョーアコーディオンもいる大世帯バンドだけれど、トランディッショナルかと言えばそうでもない。どことなくポストパンクの香りが。3曲目の"Une année sans lumière"とかそうだ。とりあえず"Neighborhood #1 (Tunnels)"のピアノリフから「このアルバムは好きになれそう」という気になって一気に引き込まれる感じ。4曲目の"Neighborhood #3 (Power Out)"ですでにハイライト。9曲目の"Rebellion (Lies)"で高揚させ、ラストの"In the Backseat"でアルバムタイトル通りの死を感じさせる。文句なしの名盤。


第2位 Bloc Party
Silent Alarm
[Wichita; 2005]

Silent Alarm

Silent Alarm

Bloc Partyのオリジナリティといえばダブル・テレキャスターが奏でる人を切り裂きかねない鋭角サウンド、マット・トンによるアヒト・イナザワばりのドラミング、そしてケリー・オケレケのボーカルと歌詞。これらの要素を全て兼ね揃え、なおかつ素晴らしくまとめたアルバムが彼らの1stであるSilent Alarm。"Like Eating Glass" のイントロから鳥肌。"Helicopter" 、"Positive Tension"とよく練られたギターソングから、ダンスチューンの"Banquet"という流れがツボ。ああツボ。アフリカ系英国人といういまだマイノリティー的な存在であるケリー・オケレケだからこそ、これらの楽曲を作れるのだと思う。


第1位 Modest Mouse
The Moon & Antarctica
[Epic; 2000]

Moon & Antarctica

Moon & Antarctica

1位は何にするかマジで迷ったけど、結局というかやはりこれに落ち着きました。Modest Mouseのアルバムは作品ごとに違ったアプローチを見せているのでどれもおすすめなのですが、どれか1つ選べと言われたらこれです。インディー・シーンにおけるシカゴ界隈の大物、ブライアン・デック先生と組んで作り上げたこの作品はさすがといいますか、流れが良い。雄大な"3rd Planet"から始まり、"Tiny Cities Made of Ashes"(ライブバージョンがやばい)を中盤に挟んで"Life Like Weeds"でたたみ掛けるという展開は文句なし。インディー・ロックの決定版と私は心酔しておるのです、このブログのタイトルにしてしまうほどに。


とまあ、10枚挙げるのにダラダラと語りましたがアルバムの評価というのは時代によって変わるのが常です。10年後、これらのアルバムがどう評価されているのかわかりません。とはいえ、どんな感じで評価されてようと末永く付き合いたいアルバムたちであることには変わらないような気がします。よいお年を。